実は、動物病院で使われている薬のほとんどは人間用の薬です。
人間のために開発する薬は、動物実験から始まります。
主に使われる動物は、 マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ニワトリ、ブタ、サルなど。
動物試験をして安全性を確認しているわけですから、人間の薬が動物に対して有効なのは、当たり前ともいえます。
欧米では、ペット用に開発された薬がたくさんあるのですが、日本の動物病院で使用される薬の8~9割は、人間用の薬と言われています。
動物専用の医薬品が少ない理由

犬の薬と人間の薬の違い
犬等のペットの治療に必要な薬のほとんどは、人間の治療に必要な薬の成分と同じで済むため、製薬会社としては、わざわざ莫大なコストをかけてペット用の薬を開発、製品化してもメリットが無いのです。
さらに、動物の体質や症状の多様性を考慮しなければならないため、薬の開発が難しいとされています。
そのため、製薬会社はリスクを抑えるために、動物専用の医薬品の開発に消極的な傾向があります。
動物用として発売するためには多大なコストがかかるため、仮に、認可を取る場合は、ペット用として需要があるものから製造発売される傾向があります。
犬の予防注射薬や、フィラリア予防薬は、動物用に開発された薬です。
それ以外のほとんどは、薬の名前が違うだけで、成分は人間と全く同じです。
また、動物専用と言っても、国内では犬猫用のものしかありません。
ウサギやフェレット用の薬は、国内では製造されていません。
犬の薬が高い理由~動物病院によって価格が違う訳
- 人間のように健康保険が使えないから10割負担になる
- 自由診療なので、獣医師が薬の値段を自由に決められる
動物用の薬しか選択できないと8割くらいの病気が治療できなくなってしまいます。
ですから、犬の治療薬の場合も、基本的には人間の薬を、犬用に分量を抑えて使います。
同じ成分なら圧倒的に人体薬の方が安く流通しています。
良心的な動物病院なら、治療コストを考えて動物用を使うか、人間のジェネリック医薬品を使用するか飼い主に決めてもらうようです。
人間用と動物用の薬の違い
点眼薬や注射剤の多くは、同じ薬品名で人間用と動物用がそれぞれあります。
ただし、人間用の薬は、あくまでも人間のための臨床試験を行い認可されたもので、管轄は厚生労働省になり、動物に対する正式な認可はありません。
一方、動物用の薬は、対象動物(犬なら犬、猫なら猫)に対してのみ臨床試験を行い認可されたもので、人に対する認可はありません。
人間が使う血圧の薬で、チバセンという降圧剤があり、主成分はベナゼプリル塩酸塩と言います。
動物用としては、フォルテコールという名前で、全く同じ成分(ベナゼプリル塩酸塩)の薬が販売されています。
また、人間用の白内障で、カタリン点眼というものがありますが、犬用では同成分でライトクリーンという目薬が発売されています。
ペットに人間用の薬を使う際の注意点

犬の薬と人間の薬の違い
人間の薬を犬に使う時には、使用量の計算が必要になります。
安易に、人間の体重の何分の一だからと計算し、薬を与えてしまうと、全く効かなかったり、重大な中毒を起こす危険性もあります。
特に猫の場合は人間や犬と比べて薬物に対しての代謝能力が低いので、注意が必要です。
ペットクリニックの獣医師は、動物用の薬の量を計算して処方しています。
体重あたりの薬の必要量が、人間と犬や猫では違ってきますから、動物用の薬には小型用から大型用まで使いやすい形で揃っています。
実際に使ってみると、同じ成分の薬でも、微妙に効き方が違うと感じられるものもあるようで、動物用に認可が取れていても、使い慣れている人体薬のほうがいいという獣医師もいれば、動物用医薬品の方が動物のデータが豊富だからと、積極的に使う獣医師もいます。
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