マラセチア皮膚炎の治し方
湿度の高い季節に発症の多いマラセチア皮膚炎は、若い犬から老犬にまで、どんな犬でも発症の危険性がある病気です。
マラセチア菌は、人や動物の皮膚にいつも住んでいる『常在菌』なので、通常は、悪さはしないのですが、宿主(つまり、人や動物)の皮膚環境に異常が生じることで、過剰に増殖すると、マラセチア皮膚炎を発症します。
詳しくはこちらを見てみてくださいね。
増えすぎたマラセチア菌を減らし、さらに過剰に分泌された皮脂分を取り除くことが、治療法になります。
犬のマラセチア皮膚炎の治療法は3通りです。
- シャンプー=基本的で必須の治療方法です
- 飲み薬=重症の場合に使います
- 塗り薬=症状が重い場合や再発を繰り返す場合に使います
アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・脂漏症・内分泌系の疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群等)などの疾患が、基礎疾患として、マラセチア皮膚炎の引き金になっている場合は、同時に治療を行う必要があります。
皮膚だけの治療をしても、大元の疾患が改善されていないと、再発しやすい傾向にあります。
人間に感染る危険はありませんが、悪化すると完治が難しくなる病気です。
マラセチア皮膚炎の治し方①~シャンプー~

犬のマラセチア皮膚炎~治し方と治療薬~
マラセチア皮膚炎の治療は、犬の身体を洗浄することで、マラセチア菌を物理的に除去することが主体になります。
マラセチアに対して、殺菌作用のある薬剤(ミコナゾールなどの抗真菌薬)を含む薬用シャンプーを使うので、結果的には薬剤治療になっています。
マラセチアは、油脂を栄養源とするため、皮膚についた汚れや余分な脂はしっかり落とし、皮膚で増えすぎたマラセチアを減らします。
シャンプーの方法
一週間に2回程度、1回目と2回目の間には、2、3日の間をあけます。
- 体の洗い方
シャンプーは泡立ててから使いましょう。

犬のマラセチア皮膚炎~治し方と治療薬~
犬の身体に直接シャンプーをかけるのではなく、洗面器等にぬるま湯とシャンプーを入れて、スポンジ等で揉みこんで作った泡で洗う方が、効果的です。
泡立てたシャンプーで、身体全体を優しくマッサージするように洗い、ぬるま湯で汚れを流します。
流す時は、2度洗いがおススメです
1回目は、汚れを落とすため、 2回目は薬の「抗菌作用」を身体に行き渡らせるためです。
シャンプーを付けたら、20分位は、洗い流さずに放置し、その後に丹念に洗い流します。
- シャンプー後の乾燥

犬のマラセチア皮膚炎~治し方と治療薬~
シャンプー後は、タオルドライ(拭き取り)とドライヤー(乾燥)をして、体の余分な水分をしっかりと除きます。 耳の中、指の間、足の裏、脇や腹部等、皮膚がくっつきやすい場所は、特に念入りに行います。
単に皮脂を落とすだけではなく、保湿をしっかりと行い表皮を滑らかに整えることで、本来備わっている皮膚のバリア機能を改善していくことも大切です。
まず、タオルで優しく、しっかりと、体に残った水分を拭き取ります。
ごしごしと力を入れて拭かないでくださいね。 そして、タオルドライが終わったら、毛を掻き分けながらドライヤーの風をあてて乾かします。
スリッカーブラシやコームを使い、毛の中に空気を送り込むような感じで、乾かしていきます。
注意点
- 熱いお湯は使ってはダメ
熱いお湯は、肌に刺激を与え、乾燥や痒みを引き起こしやすいので、30~35度程度のぬるま湯を使います。
- 洗いすぎてもダメ
犬の皮膚を清潔に保つことは大切ですが、シャンプーをしすぎると、皮膚が乾燥し皮脂を余計に出してしまうという悪循環に陥ります。
界面活性剤が多く含まれた、洗浄力の強いシャンプーでは、マラセチアを悪化させやすいので注意が必要です。
オススメのシャンプー
マラセチアや白癬を退治するミコナゾール硝酸塩配合のシャンプーが良いです。
有効成分ミコナゾール硝酸塩の働きによって、マラセチア皮膚炎の原因となるマラセチア真菌の細胞膜に障害を起こし、その増殖を抑制することで治療するシャンプーです。
また、同じく有効成分のクロルヘキシジングルコン酸塩が、マラセチア皮膚炎を悪化させる要因の1つであるスタフィロコッカス(ブドウ球菌)を殺菌します。
動物病院に行かなくても安く買えますよ。
マラセブシャンプーと同内容です。
内容量:
1本765ml 1本=3,024円(100ml当たりの単価=396円)
2本=4,544円(100ml当たりの単価=594円)
有効成分:ミコナゾール硝酸塩 2% w/w、クロルヘキシジングルコン酸塩 2% w/w
内容量:1本200ml 1本=3,276円(100ml当たりの単価=1,638円)
有効成分:Miconazole Nitrate(硝酸ミコナゾール) 20g/L、Chlorhexidine Gluconate (グルコン酸クロルヘキシジン) 20g/L
内容量:
1本250ml 1本=3,499円(100ml当たりの単価=1,399円)
2本=3,289円(100ml当たりの単価=1,315円)
有効成分:Chlorhexidine(クロルヘキシジン)20mg、Miconazole(ミコナゾール)20mg
内容量:237ml
価格:
1本=¥3,912(100ml当たりの単価=1602円)
2本=¥7,640(100ml当たりの単価=1519円)
3本=¥11,142(100ml当たりの単価=1476円)
有効成分:ミコナゾール 2.0%
マラセチア皮膚炎の治し方②~飲み薬(抗真菌薬による治療)~
マラセチアにかかった犬の治療としては、基本的に抗真菌薬を服用します。
1.イトラコナゾール
イトラコナゾールという薬がマラセチア皮膚炎の治療において、第一選択薬になっています。
イトラコナゾールは、トリアゾール系の抗真菌薬です。
カビの一種であるマラセチアはどの犬にも存在しており、アトピー・免疫力の低下した状態の時に発症するリスクが高くなります。
イトラコナゾールは、真菌と酵母菌に効果があり、真菌が原因となっている病気だけでなく、ブラストミセス症やクリプトコッカス症にも効果を示します。
アレルギー反応がある犬の場合は、抗炎症量程度のステロイド剤を、併用で投与することもあります。
犬の体重1㎏に対して、5mgのイトラコナゾールを、 1日1回・2~3週間の連日投与を行うか 連日2日投与の後、5日休薬するパルス療法が可能です。
イトラコナゾールは、食事とともに摂取すると吸収が上がります。
ケトコナゾールよりも、副作用は少ない薬剤です。

犬のマラセチア皮膚炎~治し方と治療薬~
2.ケトコナゾール
ケトコナゾールはイミダゾール系の抗真菌薬です。
犬の体重1㎏に対して、5mgのケトコナゾールを、1日1回・2~3週間与薬します。
脂質と一緒に摂取すると吸収がよくなるので、食事とともに与えます。
ケトコナゾールは、日本では外用薬のみ発売されています。
肝臓の酵素活性を阻害するので、投薬前は肝機能の評価を行います。
副作用は、食欲不振、嘔吐、下痢などの消化器症状です。
マラセチア皮膚炎の治し方③~塗り薬~
四肢など比較的限局した部分の治療では、塗り薬などの外用薬をメインとした治療でも、マラセチア菌を減らし、良好に改善する場合もあります。
重症や再発性の場合には、白癬の治療用の抗真菌剤が添加されているクリーム、ローション剤を洗浄後に塗ります。
外耳炎は、薬用クリーナーで定期的に外耳道を洗浄します。
幅広い効果のある抗真菌軟膏です。⇒ケトコナゾールクリーム
マラセチアだけではなく、ブラストミセス症、ヒストプラズマ症、イースト感染、皮膚糸状菌(犬、猫)が、ケトコナゾールにより扱われる感染症です。
マラセチア皮膚炎の治療の注意点
マラセチア皮膚炎は、もともとアレルギーなど何らかの皮膚トラブルを抱えていたり、基礎疾患をもっていたりする犬に発生しやすい病気です。
状況によってもかわりますが、マラセチアの治療には1カ月程度は必要になると思われます。
元になる基礎疾患が存在するときには、同時に治療を行わないと、マラセチアの治療だけをしても、たびたび再発します。
マラセチアは、完全に治すのが難しい病気です。
皮膚症状がおさまった後も、再び発症することも多い病気のため、脂肪分の多い食事や、運動不足をなくすなどの生活への配慮も必要です。
基本的な治療は、薬剤を使うことになりますが、皮膚や耳は常に清潔にしておくよう、治った後もシャンプーや耳のケアを続けることが必要になります。
再発性のマラセチア皮膚炎
再発性のマラセチア皮膚炎も問題となっています。
マラセチアの治療をすると、脱毛したところが発毛したり、赤みがなくなったり、ベタベタする耳アカが減ったりと、皮膚炎や外耳炎の症状は良くなりますが、治療をやめるとすぐに再発してしまうケースが多く、継続したケアが必要になります。
基本となるシャンプーを継続的に行うことで、マラセチアが増殖しやすい環境を作らず、過剰なマラセチアを排除することが大切です。
国内外で犬の難治性マラセチア皮膚炎や、脂漏性皮膚炎の治療に有効だったアゾール系抗真菌剤に対しても、効果が見られないマラセチア菌も検出されているので、長期の抗真菌剤使用には注意が必要です。
特に、ステロイドや免疫抑制剤治療によって、犬や猫のアトピー性皮膚炎の病変部でマラセチア菌が異常増殖し、マラセチア皮膚炎が悪化することもあるのですが、アトピー性皮膚炎が悪化したと誤認してしまうこともあります。
コメント